<リフォーム費用の考え方>

 

1.坪単価の相場は20万円?

まずすごく乱暴なことを言いましょう。長屋やアパートのリフォーム相場は坪単価で20万円くらいです。10坪なら200万円。あくまでもこれは、特にデザイン等を重視せず元の間取りを活かしてきれいにする場合の話です。古すぎるような設備はもちろん現代的な設備に改造する前提ですが。
新築でアパートを建てる場合の坪単価の相場は30〜50万円。平均的には40万円弱になるでしょう。約半額ということになります。リフォームの費用がもし坪あたり40万円を超えるようなことなら、「建て替えた方が絶対いいよ」ということになるわけです。

リフォームの費用は、建物の状況によっても変わってきます。電設や水道配管、あるいは基礎や骨組みがそのままでは使えないとなればその分費用も高くなるでしょう。耐震補強が必要になる場合もあるでしょう。
このページでご紹介しているような築30年以上の建物では、電設はまずやり替えることになるでしょう。古くて細い電線で大量の電気製品を使い続けている状態を看過しているといつ火事になってもおかしくありませんから。水道の配管も建築当時とは基準が変わっているので新設しないといけなくなることが多いでしょうね。

古い長屋やアパートをリフォームする場合、普通にただきれいにしただけでは入居してくれる人がいないかも、ということも当然考えないといけません。まあそのあたりは近隣の競合状況や地域特性(大学が近くにあるとかお年寄りが多いとか)にもよるので一概には言えません。でもまあ日本中の多くの地域で、古い建物を普通にリフォームしただけでは入居率が確保できないという時代がおおむね到来してしまっているということは事実でしょう。と考えれば収益を見込むために実際にリフォームにかけるべき金額は上の金額より少し高く設定せざるをえないでしょう。一点豪華主義的に工夫してコストは抑えて利益が見込めるプランを立てないといけません。

 

2.入居率80%なら優良物件?

入居率の話をせねばなりません。築10年くらいの平均的なアパートやマンションの入居率は徐々に下がっていっています。立地やらグレードやらいろんな条件があって一律には語れませんが、入居率が80%を超えていれば優良な物件ということになるようです。つまり平均的な入居率はもっとずっと低いということですね。残念ながら全国的に入居率を調査したようなデータはおそらく存在しないので想像するしかありませんが。
築30年にもなる長屋やアパートでは当然入居率はもっと下がります。長く住んでいた方が退去した後が何年も空いたままになっているというのも不思議ではありません。そういう状況で不動産屋さんに相談したとすると、値下げかリフォーム、場合によっては建て替えを奨められるはずです。困っておられる方も多いと思いますが、値下げしていってもなかなか部屋は埋まらないです。しかも極端に値下げしていくと、それが既に入居されてる方の耳に入って家賃の値下げを要求されるようなことにもなりかねません。退去されるよりは値下げの方がいいか、というようなものでどんどんじり貧になっていってる大家さんも多いことでしょう。

話が少し逸れましたが、とにかく大家さんを取り巻く状況は厳しいものです。人口が減っていってる時代ですし、しかも東京以外では極端にその傾向が強いわけです。であるのにも関わらず、新規参入で新しいマンションやアパートがどんどん建って完全な過剰供給状態です。地方都市では、さびれた駅前の再利用ができず、ちらほら増えていた空き地が次第にマンションに変わっていっていることでしょう。まずは日本の大半がそういう状況であるという認識をきちんと持つことが必要です。芽生えた危機感に耳を傾けてください。その上で近隣の住宅事情の情報収集をしていけばいくつか選択肢が見えてくるはずです。

 

3.損益分岐点を見極める?

ようやっと話をぐぐっと戻します。「損益分岐」(利益が見込めるライン)の考え方です。リフォームが是か非かは地域の家賃相場、立地等でだいぶ変わってきます。仮に10坪の部屋で家賃が7万円も取れるような地域&立地なら、リフォームに300万円くらいかけてもすぐに回収できます。固定資産税や火災保険の支払いを加味しても4年続けて入居してもらえれば減価償却してしまえますから。一般に貸家の場合、減価償却の目安は10年くらいでしょう。地域&立地の条件が悪いところではもう少し時間が必要になるでしょうけど。入居率が80%で優良物件というのをひと部屋あたりに置き換えてみれば、空室になる期間が20%以上は発生するということになります。そういう前提で考えれば、先ほどの300万円投資&7万円家賃のケースなら、空室になる20%の期間を考慮しても5年で元が取れる勘定になります。所得税を計算に入れていませんが、所得総額でだいぶ変わってくると思うのでご自分で計算なさってください。減価償却中は少額になるはずですが。
地方都市の郊外ではどうでしょう。きれいにリフォームしたとして10坪の部屋で家賃は4万円とか5万円くらいでしょうか。年に50万円の収入が見込めるとして、しかも優良入居率を確保したとして、年間の売り上げは約50万円×80%で40万円くらい? 固定資産税や火災保険は空室であれなんであれ発生しますから、仮にリフォームに300万円かけてしまうと減価償却に9年くらいかかってしまうことになります。入居率が少し下がれば赤い文字がちらつきますね。相場の200万円でリフォームすれば5年くらいで減価償却できる計算にはなりますが、普通にきれいにしたくらいでは10年間のトータルで入居率80%をキープするのは至難のワザでしょうね。

 

4.乱暴に単純化したまとめ

◇家賃が5万円の部屋なら
  5万円×12ヶ月=年間売り上げ60万円
  固定資産税と火災保険の1室分が年間約10万円

  で、4年に1回くらいは退去があって、退去の後は数ヶ月空室状態が続き
  かなり順調にいったとして5年のうち半年くらいは空いていることになります
  退去すれば清掃業者も入れないといけませんし
  補修でお金も出ていって10万円やそこらの出費にはなるでしょう
  そんなものは以前は礼金でまかなえていたはずで計算に入れる必要もなかったでしょうが
  最近は礼金の相場も激減中ですしね
  4年住んでもらって総額約190万円の利益として
  半年空いて少し出費があって空室の間も税金&保険は支払って
  また4年住んでもらって…と考えて
  10年間で総額約420万円の収益が見込めることになりましょうか
  所得税を計算に入れると、残るのは350〜380万円くらいでしょう
  (納税時の減価償却の扱い方で変わるでしょうけど20%まるまる支払うことはありえないので)

  上の計算では入居率は約90%、
  これが80%、70%となってくればその分利益は減ってくるわけです
  80%を想定すれば10年で310〜340万円というところでしょうか
  リフォームするのに入居率70%や60%を狙うことはありえないと思いますが
  地域や立地によってはそういった覚悟もいるかもしれません
  地域の実情に応じて高齢者向けの部屋(助成金が出る市町村が多いはずです)や学生向けの部屋
  OL向けの部屋、ヤングファミリー向けの部屋、などなど最大限の工夫をして
  せめて入居率が80%を超えるような部屋を作ることを大前提として

  家賃5万円の部屋のリフォームにかけられる費用の限界値は300万円あたり
  家賃が仮に4万円なら限界値は240万円あたりになるでしょう
  利益を上げるということを考えれば、実際にリフォームにかけられるのは
  上の限界値の80%くらい…で考えておいて
  あとは少しでも入居率が上がるように知恵を絞る
  これから貸家のリフォームを検討される方は
  そのあたりを目安にプランを検討されると良いと思います(2011.1)

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